トップクリニックだより糖尿病予備軍、早期の糖尿病を見逃さないために

健康診断の結果で問題がなくても、食後の血糖値が高い方がいます。
食後高血糖は、糖尿病になる前の段階である「糖尿病予備軍」においても重要な指標となります。

● 食後2時間経っても血糖値の高い状態が続く「食後高血糖」

健康な人の場合、血糖値の上昇にともない適切な量のインスリンが分泌されるため、食事で血糖値が上昇しても食後2時間程度で140mg/dL未満まで低下します(血糖値の正常範囲は70~140mg/dL)。しかし、糖尿病や糖尿病を発症する前の段階、または糖代謝異常の状態にある糖尿病予備軍の場合、インスリンが分泌されていても正常に働かなくなる「インスリン抵抗性」やインスリンの分泌が少なくなる「インスリン分泌不全」などが原因で、血糖値が低下せず高い状態が続きます。これを「食後高血糖」といいます。

【 図1:健康な人と食後高血糖の人の食後の血糖変動 】
健康な人と食後高血糖の人の食後の血糖変動

● 食後高血糖は健康診断では見逃されやすい

会社の健康診断などでは、食事を抜いた状態で血液検査をするため空腹時の血糖値は分かっても食後の血糖値は分かりません。糖尿病がかなり進行した状態でなければ空腹時の血糖値は病気のレベルまで上がらないため糖尿病予備軍や初期の場合、診断からもれてしまう可能性があるのです。
2型糖尿病患者130名を対象とした血糖変動モニタリング調査を見てみましょう(図2)。健康な人の血糖値(水色)は食後上昇しても基準値を超えることはありません。HbA1c6.5%〜7.0%とやや高い値の人(赤)は、空腹時の血糖値は基準値内ですが食後に高血糖をきたしています。HbA1c7.0〜8.0%の人(緑)では空腹時血糖は大して高値を示していないのにも関わらず食後に200mg/dL近く上昇しています。この結果、健康診断や特定健診で行われる空腹時の血糖測定検査では、早期の糖尿病はほとんど見つけられないということが分かります。

【 図2:2型糖尿病患者130名を対象とした血糖変動モニタリング調査 】
2型糖尿病患者の血糖日内変動

● 空腹時高血糖よりも食後高血糖の方が心血管系疾患による死亡リスクがあることがわかっています

国内の大規模研究で「健康な人」「空腹時高血糖の人」「食後高血糖の人」「糖尿病の人」の4群で心血管病の発症を観察した結果、糖尿病の人は健康な人に比べて死亡リスクが約3倍あることが分かりました。また、食後高血糖の人は、健康な人と糖尿病の人との中間くらいにあることが明らかになりました。また、アジア人を対象とした大規模調査では、空腹時血糖が低くても食後2時間の血糖が上昇するに従って死亡率が高くなり、食後高血糖が動脈硬化の進展に関与することが分かっています。
糖尿病と診断を受けていない予備軍のなかでも、食後血糖値が高い人は動脈硬化を促進し、脳卒中などの大血管障害を起こしやすいというわけです。

【 図3:舟形コホート集団における心血管疾患の生命表分析(舟形町研究) 】
舟形コホート集団における新血管疾患の生命表分析

● 食後高血糖を調べるには

食後高血糖を調べる手段としては血糖測定器を用いる方法がありますが、糖尿病と診断を受けていない人には、指に使い捨ての専用針を刺して測定することや使用済み針の処理など、あまり現時的な方法ではありません。そこで、市販の尿糖試験紙を用いる方法があります。尿糖測定は、内服中の薬剤による影響を受けたり、腎機能が低下した高齢の方の場合は尿糖排泄が減少するなど万能な検査ではないため、糖尿病の診断には用いませんが、血糖値がおよそ170mg/dLを超えたあたりから尿中に出てきますので、自宅で行えるスクリーニング検査としては有用といえます。
正しく測定するためには、食前に完全に排尿し、食後2〜3時間の尿を測定します。尿が残っていると前の食事の影響を受けたり、尿量によっても測定結果に影響を及ぼすので注意しましょう。

【 図4:自宅でできるスクリーニング検査として有用な尿糖検査 】
糖尿病のスクリーニング検査 尿糖検査

尿糖測定で陽性となっても、腎性糖尿の場合など尿中に糖が漏れ出す場合があります。

● 食後高血糖を改善するための方法

食後高血糖を改善するためには、食事や運動などの生活習慣の改善が基本となります。
通常、血糖値は食後1時間前後で最も上昇します。そのタイミングで運動をすると血液中のブドウ糖が消費されやすいため、早歩き程度の軽いウォーキングなどの有酸素運動を20分〜30分ほど行いましょう。また、食事では食物繊維が多く含まれる野菜や海藻類を先に食べ、糖質を多く含む炭水化物を後から食べると良いでしょう。同じカロリーや糖質量でも、食後血糖値の上昇が抑えられる食品がありますので、意識してみましょう。
お薬が必要な場合、α-グルコシダーゼ阻害薬や速効型インスリン分泌促進薬などの飲み薬や、インスリン療法では、食事の前の超速効型や速効型インスリンの追加を検討します。

糖尿病の外来では、原則として食後に血液検査を行います

胃の検査や腹部エコー検査がある場合などを除いて、糖尿病の状態を調べる検査では食後の血糖値をみる必要があります。患者さまのなかには食事を抜いて検査にいらっしゃったり、インスリン治療中の方でも検査があるからとインスリン注射を打たずに受診をされる方がいますが、それでは普段の状態が分かりません。特に指定がない限りは、普段通りに過ごして受診されるようにしてください。


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