● 夜間低血糖が早朝高血糖の誘因となるメカニズム
通常、血糖値は1日を通して常に変動しており、深夜から朝方にかけて成長ホルモンやグルカゴンなど血糖値を上昇させる「インスリン拮抗ホルモン」の血中濃度が変化します。健康な人の場合、それにあわせて血糖値を下げるインスリンホルモンの分泌量も増えるため血糖値は正常範囲内に保たれます。しかし、糖尿病治療中で、特にインスリン療法やスルホニル尿素薬(SU薬)を使用している場合、食事の量やインスリンの量、アルコールの摂取などが影響し、血糖値が下がりすぎた結果、低血糖を起こすことがあります。その反動でインスリン拮抗ホルモンの分泌量が増え、肝臓でのグリコーゲンの分解や糖新生が促進されて血糖値が上昇します。
このように、低血糖が起きた反動で血糖上昇ホルモンが分泌され、高血糖をきたす現象を「ソモジー効果」といいます。
【 図1:インスリン拮抗ホルモンの夜間の推移 】
血糖値を上げる作用のあるインスリン拮抗ホルモンは深夜〜早朝にかけて分泌量が変化します。
同じように起床時高血糖になる現象として「暁現象(Dawn Phenomenon)」というものがありますが、これは夜間低血糖が誘因ではありません。インスリン拮抗ホルモンの分泌に対抗するインスリンが不足するために起こります。インスリンがほとんど出なくなった状態の1型糖尿病に起きやすく、2型糖尿病でもインスリン分泌が不足していると暁現象が起きる場合があります。
【 図2:ソモジー効果と暁現象 】
深夜3時ごろの血糖値をみると、ソモジー効果は低血糖を起こしていることが分かります。一方、暁現象は血糖値が上昇しています。
● 夜間低血糖を起こさないために
症状には個人差がありますが、「朝の血糖値が高い」「たくさん寝汗をかいている」「嫌な感じがして夜中に目が覚める」「朝起きた時に体がだるい」などの症状があれば、夜間低血糖を疑ってみましょう。低血糖を頻繁に繰り返すと、前兆なく意識障害や昏睡に至る“重症低血糖”に陥りやすくなります。低血糖を繰り返さないためにも、症状に気づいたらすぐにブドウ糖などを摂り適切に対処しましょう。
また、血糖値が高いからといって、朝にインスリン量を増やすと1日の血糖コントロールに悪影響を及ぼす可能性があります。少しでもおかしいと思ったら主治医に相談し、インスリン量や夕食の内容について調整を検討しましょう。
【 図3:夜間低血糖を起こすおもな原因 】
夜間低血糖を起こす原因は人それぞれです。
低血糖を起こさないために、なぜ低血糖になったのか振り返ってみましょう。